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元TSUTAYAスタッフが映画のあらすじや感想を備忘録をかねてつづっています

みんな怪しい翻訳家たち【映画感想】9人の翻訳家 囚われたベストセラー

DVDにて。

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原題:Les traducteurs

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』予告編 - YouTube

 

【あらすじ】

全世界が待ち望むミステリー小説『デダリュス』の完結編の出版権を手に入れたエリックは、海賊版や流出を防ぐため、フランスの人里離れた洋館に9人の翻訳家を集め、地下に軟禁して翻訳をさせる。そこでは、外出もできず、電話やインターネットの使用も禁じられていた。そんな中、9人の翻訳家たちは、毎日渡される20ページの原稿をひたすら訳し続けていた。案内役のローズマリーも含め、みんなでシャンパンを飲んでパーティをしたりとそれなりに楽しんで過ごす9人の翻訳家たち。そんなある夜、エリックの元に「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば、全ページを流出させる」といった脅迫メールが届く。果たして犯人は誰なのか・・・。

 

【感想】★★★★☆

原題はそのまま「翻訳家たち」といった意味ですね。日本語タイトルがごちゃごちゃしてるのと対照的にかなりシンプルです。

 

全体的によくできてるんですが、軽い感じがするのはなぜでしょう?結構重たい展開にはなってくるのですが、重くなりきれてないんですよね。それ、必要ある?ってところがちらほらあるし。演出過多っていうんですかね。そんな感じです。

翻訳者たちとは言え、エリックが話すフランス語はみんな理解できてるの?と思ったけど、そもそもデダリュスが、フランス語で書かれてるのかな。フランス語から各言語に訳すと言うプロジェクトなら、みんなフランス語は理解できて当然だよね。著者のオスカル・ブラックはフランス語を話していたと思うのですが、見てから2ヶ月くらい経ってるのでさだかではないです。

 

ダメだしから書いてしまいましたが、フーダニットから始まり、ハウダニットホワイダニットと続けて明らかになっていく流れはとてもよかったです。ツイストがグリングリンきいてます。伏線は序盤から張り巡らされているのですが、誰が犯人かを論理的に解くのは難しいですね。

 

エリックは強欲で自己中な感じが分かりやすくてよかったです。もうこうなると金の亡者ですね。いくらあっても足りない状態で、餓鬼に憑りつかれちゃってます。ローズマリーは、フランス人!って感じの外見とスタイルで素敵でしたね。翻訳者たちも、外見が個性的だったので、見分けが難しいといったこともなかったです。

 

この先は、ネタバレになってしまうので、未鑑賞の方はご注意ください。

文字色を薄くしてあるので読みにくいときは、反転させて読んでください。

 

そもそも、アレックスはみんなを共犯にする必要があったんですかね?そんなにややこしいことしなくても、一人で復讐はできたと思うんですが。トランクケースを入れ替えるって荒業は、「どう考えても無理でしょう」と思ってたけど、実は入れ替えてなくて、「なるほどね」ってなった。

 

エレーヌの自殺やカテリーナが撃たれたりなど、なかなか被害が大きいのですが、そのことに関してアレックスは責任を感じるべきですよね。アレックスがカテリーナの病室で心配そうにしてるのは、恋が芽生え始めただけではなく、死んでしまったら取り返しがつかないからだと思いました。アレックスのためにも助かってほしいですね。せめて、意識が戻るシーンがあればよかったのですが。

 

ローズマリーが写真を見て、あっさりエリックを裏切った理由がよくわからず検索してしまいました。あれは、いいように使われている自分を客観的に見たからですね。写真一枚でローズマリーを動かすアレックスはすごい。脅迫して受け取ったお金をエリックの口座に移すのも抜け目ないですよね。自作自演に見せて、罪を大きくできるし。

そして、アレックスはどうやってエリックがジョルジュ殺しの犯人だってわかったのでしょうか。エリックが捕まってないと言うことは警察もわかっていない事実です。ジョルジュからエリックと会う約束があることを聞いていたのでしょうか。

 

冒頭の火事は、こんな意味があったのかーとわかるのが最後の最後なので、とてもいい感じでした。それにしてもエリックは本当にひどい奴ですね。ジョルジュを殺した上に、アレックスの想い出もたくさんつまった本屋さんを燃やしてしまうなんて。

エリックと言えば、なんで彼は私服で刑務所にいるんでしょうか。そりゃあ、囚人服着てたらミスリードが台無しになるので当たり前と言ったら当たり前なんですが。まだ裁判中で拘留されてるだけって設定なのでしょうか。そういうことにしておきましょう。

 

アレックスがどれほどジョルジュをしたっていたかが、ラストの表情でわかりますね。

面会室で、どうやって原稿を盗んだか暴露してましたが、あれは大丈夫なんでしょうおか。彼が脅迫罪なんかで捕まらないといいのですが。

 

悪いことしたやつが、まんまとハメられて牢屋にぶち込まれるというストーリーではあるのですが、いまいちスッキリしないのは自殺者が出たり、お腹を打ち抜かれて意識不明の重体者が出たりとこちら側の被害が大きいせいでしょうか。ジョルジュは生き返ったりしないからでしょうか。

 

見終わった後、複雑な気持ちになる映画でした。