切なさ満開【映画感想】ソローキンの見た桜
試写会にて鑑賞。
ロシア語タイトル:Вплену у сакуры 「桜にとらわれて」.
【あらすじ】
現在。地元のロシア人墓地を取材していたTVディレクターの桜子は、先輩の倉田にソローキンの墓がないことを教えられ、ロシアへの取材に同行することを頼まれる。
いまいち乗り気ではなかった桜子だが、家で祖母に先祖のゆいの日記を見せられる。
日記を持ってロシアに渡った桜子は、祖母からある事実を告げられる。
そして、二人の日記を追っていくうちに、彼女のルーツが見えてくる。
日露戦争時代。日本の捕虜となったロシア兵捕虜、ソローキンを手当てすることとなったゆい。
ゆいの弟は戦争で亡くなっているため、複雑な思いを胸に抱いていたが、そのうちにソローキンに惹かれていく。
ロシア革命のために祖国に戻らなければいけないソローキンは、ゆいを連れて脱走し、ロシアに戻ろうとするが・・・。
【感想】★★★★☆
ロシア語タイトルは、「桜にとらわれて」といった意味のようです。
こちらのタイトルもいいですね。
「ソローキンの見た桜」も、とてもいいタイトルだと思います。
ラジオドラマが原作としてあり、南海放送で放送されたようです。
ソローキン役のロデオンがかっこよかったです。ロシアのディカプリオって感じ。
ゆい役の阿部純子さんもキリッとした美人さんでしたね。
所長役のイッセー尾形さんは、相変わらずいい味だしてました。
すっとぼけた感じがなんとも言えず、ナイスキャスティング。
この人は、軍服姿がやたらと似合うんですよね。
昔の人の顔なのかも。
ボイスマン大佐役のアレクサンドル・ドモガロフ氏はロシアの名優らしく、舞台挨拶でイッセー尾形さんが「(彼に比べると)僕の小物感がすごかった」とおっしゃってました(笑)
ストーリーはわかりやすいロミジュリ的な話なんですが、史実を元にしているそうで、なかなか切ないです。
でも、わりと明るく描いていて、イッセー尾形さんの存在のせいか、笑いが起こるシーンもありました。
松山の桜や城の風景は本当にきれいで、サンクトペテルブルクの街並みも美しく、とてもいい対比だったと思います。
収容所として寺に捕虜が収容されているのですが、寺にロシア人というなんとも言えない組み合わせが新しく、それでいてなんとなくしっくりくる感じがしました。
欲を言えば、もっとサンクトペテルブルクの街並みが見たかったです。
残念だったのが、BGMが大きすぎたのか、会場の音響のバランスのせいか、会話が聞き取りにくいところがありました。特に倉田の声が。
特にBGMいらないんだけどなって思ってしまいました。
この先は、ネタバレになってしまうので、
未鑑賞の方はご注意ください。
文字色を薄くしてあるので読みにくいときは、
反転させて読んでください。
どこまでが実際にあったことなのか、どこからが脚色なのかがわからないのですが、一番男前だったのは、後にゆいの旦那さんになった人ではないでしょうか。
ソローキンとゆいの娘ごと受け入れるなんて、懐が大きすぎてもう・・・。
ほんの少ししか登場しないのに、おいしいところ持って行ったなぁと思いました。
ゆいの手紙がソローキンの死後にしか届かなかったなんて、それもまた切なかったです。
ソローキンは、娘がいたことはおそらく知らずに亡くなったのでしょう。
ソローキンとともにゆいがロシアに渡ろうとしたら、許可証はなかったと思うので、この脱走は成功しなかったかもしれません。
そう考えると、ゆいの決断も正しかったと思えますが、やっぱり切ないです。
ソローキンを死亡したとして、捜索を中止にした後、ボイスマン大佐がやってきて、二人でたばこを吸うシーンがよかったです。
あと、正露丸とこんにゃくのシーン。
ちゃんと食べるところがえらいですね。
戦時中だから、粗末にできなかったのかもしれません。