シネマの前で待ち合わせ

元TSUTAYAスタッフが映画のあらすじや感想を備忘録をかねてつづっています

マッツ目当てのはずが【映画感想】偽りなき者

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英語タイトル:THE HUNT

原題:JAGTEN

 

【あらすじ】

ルーカスは、妻と別れ息子とは別居中の保育士。

ある日、クララという親友の娘の罪のないウソによって、変態の烙印を押されてしまう。

親友まで何もやっていないルーカスを信じてくれず、小さな町の中でどんどん追い込まれていく。

 

【感想】★★★★★

原題は、デンマーク語で「狩り」を意味するようです。

英語のタイトルもそのまま「狩り」ですね。

魔女狩り」と、ルーカスの趣味の「狩り」のダブルミーニングのようですが、私は単純にこの映画のコンセプトが「狩り」だと感じました。

 

北欧の至宝、マッツ様をたっぷり拝もうと借りてきたこの作品。

マッツ様のビジュアルもまさに宝石のようでしたが、作品としても、とてもいいものでした。

 

ルーカスがかわいそうで、悲しくて、いつの間にか泣いてた。

「犯罪者になら何をしてもいい」という間違った正義がたくさん見られます。

 

序盤は、ルーカスがクララに対してとても優しくてほっこりします。

こんなんされたら、誰でも「ルーカス好き!」ってなる・・・。

小さい子に優しくする男性は本当に素敵に見えますね。

でも、その後、疑惑の目を向けられ始めるとそこからどんどん雲行きが怪しくなっていきます。

ルーカスも、もうちょっと強く否定したらいいのに・・・。

 

この作品の賞賛すべきところは、「クララが憎らしくならない」という点。

ルーカスがひどい目にあうのはクララの嘘のせいなのに、クララを憎めなくする脚本と演出が素晴らしいんですよ。

なんでクララが、ルーカスを困らせる嘘をつこうとしたのかもわかりやすい。

 

マッツが好きな人は必見ですし、そうでない人もぜひ。

 

この先は、ネタバレになってしまうので、未鑑賞の方はご注意ください。

文字色を薄くしてあるので読みにくいときは、反転させて読んでください。

 

クララがルーカスに恋心を伝えるところはかわいらしいですね。

小さいのに、ちゃんと「女の子」で。

フラれた腹いせに嘘をついてルーカスを困らせる・・・

自覚はないのかもしれませんが、説明するとそんな感じ。

 

でも、クララのせいというより、8割は大人の誘導尋問のせいですよね。

クララはその後、何度か「そんなことされてない」ってちゃんと言うのに大人は信じてくれない。

お母さんが過敏にクララを守ろうとする気持ちもわかるから、誰も悪くないのにな・・・って感じでした。

クララに変な画像を見せたにーちゃんがこの事態を引き起こした原因ではないかと思ってしまう。

 

ペットの犬を殺されたとわかるシーンは、本当に辛かった。

これは、フィクション、これはフィクション・・・と自分に言い聞かせないと見てられなかった。

仮にルーカスが本当に罪を犯したとしても、犬に罪はないのに。

殺人犯の子供を殺すようなものです。

ルーカスは、自分のせいで殺された犬をどんな気持ちで埋葬してあげたのでしょう。

私だったら、立ち直れないし、犯人を許せない。

 

ラストも、ルーカスの疑惑が晴れて、みんなと楽しく飲んでいるところで終わってしまってよかったんじゃないかと思う。

まだ続くんだってわかったときに、どうやって終わらせるんだろう・・・となってしまい、やっぱり最後は蛇足だった気がします。

一度狩りの対象になってしまうと、簡単には逃れられないんだよってことなんでしょうけど、後味が悪くなってしまった。

ルーカスもみんなも笑って終わりでよかったと思います。

静けさは命取り【映画感想】サイレンス

他のブログから転載。(2016年5月16日)

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原題:HUSH

 

【あらすじ】★★★★☆

わたし、サラ。10代のときにかかった病気のせいで、耳が聞こえないし、話せないの。一人で小説を書きながら、林の中にある家で暮らしているけど、友人とその恋人が近くに住んでるし、飼い猫のビッチもいるし、寂しくないわ。さて、今日も小説を書かなくっちゃ。

ってな感じのところに、クロスボウとナイフを持った快楽殺人鬼がやってきて、友人を殺し、さらにサラを標的にするが、「わたし、殺される気なんてサラサラなくってよ!」って話。

 

【感想】★★★★☆(ふわっとネタバレしてるので注意)

今のところ、NETFLIXでしか観られないようだし、面白そうなので観てみた。
原題の「HUSH」は、サイレンスと似た意味で、「静けさ」・「沈黙」って意味のよう。
この日記のタイトルは、ジャケットの英文「SILENCE CAN BE KILLER」を自分なりに訳したものです。

 

普段は、手話と読唇で会話もできるし、パソコンやスマホもあるし、そんなに困らないけど、VS殺人鬼 となると、もう圧倒的に不利!あれよあれよと言う間に、スマホを奪われ、電気も断たれて、陸の孤島の出来上がり。そんなにマッチョな殺人鬼ではないけど、サラも普通の女性のため、取っ組み合いになったらかなわないから、サラの武器は頭脳だけ。「頑張れ、サラ!」って感じになって、身体にムダな力が入りまくった。

 

ジャンルは、サスペンス・ホラー。これも、「FBIのみんな早く来て~!」ってなる。主人公が話せないから、セリフが最低限で、映像でその意味をつかんでいくのが面白かった。例えば、殺人鬼が持ってるクロスボウの傷がアップになる場面。

殺した人数を刻んでるんだなってわかって、ゾッとする。本当にサイコパスシリアルキラーなんですよ、この兄ちゃん。ただ殺すんじゃなくて、じわじわと追いつめて行くのが楽しいらしい。絶対にお知り合いになりたくないですねぇ。

 

ありがちなシチュエーションなんだけど、耳が聞こえないってだけで、ドキドキ・ハラハラ感がマシマシなんですよ。


余談ですが、ネコの名前がビッチって、ひどいね。ウケねらいみたいだったけど。オスネコだったら面白いなって思ったけど、その描写はなかった。

それから、アメリカみたいに、靴を履いたまま家の中に入る習慣は、こういう時便利だなーと思った。部屋の壁の色がやたらオシャレなのが印象的。


それから、作家の乙一氏が書いた、目の見えない女性の家に、殺人容疑をかけられた人がこっそり隠れ住むって言う作品を思い出した。

「暗いところで待ち合わせ」その本の何が一番怖いって、表紙とタイトルが一番怖いです。中身は、全然怖くない。この小説も面白いのでオススメ。

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この作品や、タイガーハウス、サプライズにもクロスボウが出てきました。

最近の流行みたいです。ウォーキングデッドが流行ってるからかな?

ダリル、かっこいいもんね。

正しいエビデンス【映画感想】エビデンス 全滅

他のブログから転載。(2016年5月10日)

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原題:Evidence

 

【あらすじ】★★★★★

ベガス行きのバスが砂漠地帯で事故って、さぁ大変!

乗っていたのは、女優の卵のリアン、その彼氏のタイラー、映画監督の卵でカメラマンのレイチェル、ロシアンダンサー、怪しげなおばちゃん、運転手のベン、手品が上手い家出少年の8人。

徒歩でトラックステーションにたどり着いたはいいけれど、そこにバーナーを持ったシリアルキラーが、どこからともなくやってきて、さらに倍率ドン! で超大変!

なんとか奴から逃げなきゃ!警察に電話!とヤンヤンする様子が写っている映像を

刑事たちが必死で観て、犯人探しをする話。


【感想】★★★★★

間違えて「エビデンスー第6地区ー」を見てしまったので、正しいものを鑑賞しました。

 

これには、すっかり騙された。観ながらいろいろな可能性を考えましたが、これは読めなかった。ホラー要素もたっぷりあるし、ホラーのジャンルになってるけど、これはミステリー。だって、犯人探しが軸だもの。パッケージのあらすじを読んで、グロそうと思っていたけど、そうでもない。ちゃんと暗視カメラになったりして、やわらげてます。

 

旅に出るまでが、長く感じ、もうちょっと短くできる気がしないでもないけど、この結末だったら許せちゃう。カメラマンが一番美人なのがもったいない。それから、刑事さんたちを撮るカメラワークがいい感じでした。オープニングも好き。


感想ではないんだけど、アメリカの映画やドラマで警察が犯人のことを呼ぶ時って、He とか him って言う。つまり、「彼」って言うんだよね。男って決めつけていて、これは男女差別なんじゃないかなぁっていつも思う。男女の区別がない呼称にしたほうが先入観もなくなっていいと思うんだけど。実際もそうなのかな?

行間多め【映画感想】ジョナサンーふたつの顔の男ー

DVDにて。

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原題:Jonathan

 

【あらすじ】

ジョナサンは、建築会社に勤めるまじめで内向的な青年。彼の中にはもう一人ジョンという人格がいて、一つの身体をシェアしていた。ジョンは、ジョナサンとは正反対の性格で、楽観的でチャラい。毎日ビデオを録画し、情報交換をするジョナサンとジョン。

二つの人格は、ルールを守り、上手く一つの身体をシェアできていたが、ジョンがエレナという女性にバーで出会ったことから、ルールが破られ、二人の関係も崩れ始め、やんやんする話。

 

【感想】★★★★☆

静かで文学的な作品でした。

洗面台を上から写すシーンがきれいだし、カメラワークも、対称、非対称を大事にしてる感じがありました。

木々の緑を写したシーンも綺麗。

 

ベイビー・ドライバーのときは、アンセルくんはまだ少年っぽさがあったけど、すっかり大人になったなと。

話し方も変えていて、二重人格の演技もうまかったけど、どうしてもスピリットのジェームズ・マカヴォイと比べてしまった。

ほとんどがジョナサン視点だったので、もっとジョンがビデオだけでなくリアルの生活にも出てきたら違ったのかも。

 

行間を読むのが苦手な人には向いてないなと思った。

わかりやすく説明してくれる映画ではないから。

それから、ちょっとグロいシーンがあるので、苦手な人は注意してください。

30秒くらいかな。

 

この先は、ネタバレになってしまうので、未鑑賞の方はご注意ください。

文字色を薄くしてあるので読みにくいときは、反転させて読んでください。

 

先天的に多重人格って設定だけど、そんな人実際にいるのかなって疑問に思ってカウンセラーの知人に聞いたら、女性でも男性でも本当にいるんだって。

 

なんでそんなことになる?

遺伝子エラーだろうなぁ。相当大変そう。

普通に生まれたことに感謝しました。

(追記:カウンセラーの知人に聞いたら、「産道での酸素不足、母親の強烈な恐怖体験、或いは脳の損傷によってはあり得ると思います。」とのこと。DNAは関係ないらしい。母親の体験が胎児の脳に影響するなんて、興味深い話ですね。かなり稀なケースのようです。稀なケースでなければ、周りの理解もあるので本人の苦しみも軽減されそう。)

 

一番印象に残ってるのは、ジョナサンが電車に乗って、向かいに座っていた女の子の靴ひもが片方だけほどけてるのが映るシーン。

この監督、いいなって思った。

ジョナサンの状況や心情をよく表していると思いました。

 

途中、フランス語が出てくるんだけど、ただのフランス語レッスンなのか何か意味があったのか・・・。

「左です」とか「右から二番目です」とか。

ジョナサンはフランスやフランス語に興味があって、ジョンは北欧に興味があってっていう対比だけなのかな。

もしくは、最後にジョンがタクシーの中でフランス語のラジオを聞いて、「音量を上げて」って言う伏線なのか。

あれは、フランス語に興味のあったジョナサンをジョンが悼んでそう言ったのだと解釈しました。

ジョナサンはもういないけど、ジョンはジョナサンなら理解できるフランス語を聞いていたかったのだと。

きっと、ジョン自身はフランス語は全然わからないのでしょう。

 

エレナにも感情移入してしまいましたね。

彼女も被害者だよなぁ。そんな理由で別れてって言われても納得しにくいだろうし、やるせない。

彼女もシェアしたらいいのに。これはできる人とできない人に分かれるだろうけど。

 

ジョナサンが消えるのが自然でよかった。医師によって人工的に消されるんじゃなくて。それだと、某ミステリ映画になっちゃうし。

ラストは双子の兄弟が消えていくような感覚だろうなって思った。

そして、あのタクシー運転手さん、状況の把握が早すぎ。

そして、ジョンは空港に向かってたけど、どこに行くんだろう。

やっぱり北欧かな。

ジョンは、しばらく昼間の生活に慣れないだろうけれど、太陽をたくさん浴びて楽しく幸せに暮らせるといいなって思いました。

ひょうひょうワトソン【映画感想】リチャード・ジュエル

試写会にて。

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【あらすじ】

 リチャードは、中小企業局アトランタ事務所に備品係として働いている。

そこでワトソン弁護士に出会い、ある理由から「レーダー」というあだ名をもらう。

二人は仲良くなり、その後、退職して警備員になるときにも、ワトソンにあいさつに行き、励まされる。

 

そして、1996年、オリンピックが開催中の都市、アトランタ

記念公園のコンサート警備にあたっていたリチャードは不審なバッグを見つけ、通報する。

爆弾処理班が確認すると、バッグの中にはプラスチック爆弾が。

リチャードの通報のおかげで観客やスタッフたちは爆発前に避難することができたが、それでも2名の死者と100人以上の負傷者が出る大惨事になった。

事件直後、リチャードは、爆弾の第一発見者・通報者として英雄扱いされるが、FBIが彼を容疑者として捜査していると報道されると状況は一転する。

リチャードは旧知のワトソン弁護士を頼り、無実を主張。リチャードの母ボブも息子の無実を信じるが・・・。

 

【感想】★★★★★

 会場に向かう電車の中で眠くなってしまい、上映中に寝てしまわないか心配していたのですが、始まるとすぐに引き込まれていきました。

上手く説明できないのですが、リチャードとワトソンのやりとりとか、雰囲気やストーリーの展開にとても惹きつけるものがあって、退屈する暇が全然ないんですよね。

 

特にワトソン弁護士のひょうひょうとしてる感じがとても好きになってしまい、ずっと見ていたくなりました。

ひょうひょうとしてるのにいい人なんですよね。

そして、一度も怒りを爆発させたりせずに冷静に対処していくのが本当にかっこよかった。

 

実際、リチャードとワトソンのW主演のような作品なので、彼の出番は多く、たくさん見られて満足。

リチャードのどこか少年っぽいところが見え隠れするのもいい感じで、二人ともナイスキャスティングだと思います。

 

ストーリー展開は、時系列に進んでいくのでわかりやすく、だいたい想像していた通りでした。

テーマは重いのですが、リチャードのキャラと、ときどき笑いが起きる場面のおかげで、重くなりすぎなくてよかったです。

変なコメディよりよっぽどおもしろかったなぁ。

(洋画のコメディは感性が違うせいか、なかなか面白いと思えないんですよね)

クリントイーストウッド監督の映画ではめずらしいかな?

 

母親の心痛とかが見ていられない感じだったら嫌だなと思っていましたが杞憂でした。

報道陣に囲まれてしまい、身動きがとれなくなるのは辛そうだったけど。

 

131分のわりと長めの上映時間でしたが、ずっと集中して見ていました。

ラストもサラッとした感じで終わってよかった。

 

「見てみようかなー、どうしようかなー」と迷っているのであれば、ぜひ見てほしいです。

 

この先は、ネタバレになってしまうので、未鑑賞の方はご注意ください。

文字色を薄くしてあるので読みにくいときは、反転させて読んでください。

 

細かいところに気が付くっていうリチャードのいいところをちゃんと見ているワトソン。その長所を発揮して、ルールに従い、正しいことをしたせいで渦中の人になってしまうリチャード。

その二人の関係性がとてもいいです。

スニッカーズが好きなことに気が付いたリチャードに「レーダー」というあだ名をつける場面が後々まで思い返されました。

ゲームセンターで一緒に遊ぶシーンもとても好き。

二人とも子供みたい。

 

もちろんリチャードは犯人ではないのだけれど、事件の場面を見てると犯人っぽい。

バッグを見つけた時点で「危険なもの」って確信してたり、スタッフに「避難しろ」と言いに行って騒ぐところとか。

ただ決められたルールを守ってるだけなんですけどね。

 

家宅捜索の後・・・

ワトソン「危険なパンストが見つかりました」( ー`дー´)キリッ

 

これには、思わず吹き出しました。

そんなクソまじめな顔して面白いこと言わないでよ。

お連れ様は、「何もしゃべるな」って言われてるのに、いざとなったらべらべらしゃべるリチャードが面白かったとおっしゃってましたね。

 

ボブが泣きながら演説していたときは、ちょっともらい泣きしそうでした。

その後、「がんばったね」って感じでいたわるワトソンも素敵でした。

そうなるともう、ワトソンはなにをしてても私の心をわしづかみ。

油揚げになった気分。それはトンビか。

 

最後の反撃にでたリチャードもかっこよかった。

「証拠はあるんですか?」の一撃もよかったけど、「爆弾を見つけた人が通報しようとしたときに、『リチャード・ジュエルの二の舞になるのはごめんだ』と思うのではないでしょうか?」と言ったときが、もう最高。最&高。

ぽちゃっとした顔がやたらかっこよく見えました。

最後は自分でFBIを蹴り倒しにいったリチャードに拍手です。

 

最後の方は、FBIも彼が犯人ではないとわかっているけれど、引っ込みがつかなくなったような感じがしましたね。

リチャードが捜査対象からはずれたことを告げる書面を持ってくる場所も、二人がハンバーガーを食べてるところで、物々しくなくてよかった。

最後は真犯人が見つかるまで6年もかかったのか・・・と思いました。

でも、リチャードはワトソンの言うように本当に「見違えたな」って感じで。

とてもいい話でした。

 

ワトソン役のサム・ロックウェルにやられっぱなしだったので、今度はスリー・ビルボードでも見て、こてんぱんにされようかと思っている次第です。