シネマの前で待ち合わせ

元TSUTAYAスタッフが映画のあらすじや感想を備忘録をかねてつづっています

重いけどよかった【映画感想 罪の声】

映画館にて。

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映画『罪の声』予告【10月30日(金)公開】 - YouTube

 

【あらすじ】

父から受け継いだ昔ながらのテーラーを営む曽根は、ひょんなことから父が残したカセットテープを見つける。1984と書かれたそのテープを聞いてみると、自分の歌声が流れてきたため、懐かしく聞いていると急にそれが途切れて、変な指示を読み上げる自分の声が流れてくる。一緒に見つけた黒い手帳には、なぜか英語でのメモがぎっしりとある。「GINGA」「MANDO」と大きく書かれた文字をネット検索してみると、そこには過去の大きな事件が・・・。

同じころ大日新聞の文化部記者である阿久津は、ギン萬事件の記事に駆り出され、取材を始める。

 

【感想】★★★★☆

本当はTENETが見たかったんだけど、お誘いしたお連れ様がもう見てしまったとのことだったので、急遽こちらを見ることに。「64ーロクヨンー」も面白かったし、たまには邦画を映画館で見るのもいいかと。

 

内容を詳しく知らなかったので、見始めてから「グリコ・森永事件」がベースなんだと気づきました。内容はなかなか重かったけど面白かった。子供は生まれてくる親を選べない理不尽さを感じましたね。事件の全貌が見えてくる感じなんですが、矛盾がほとんどなくてよかったです。

 

小栗旬星野源のW主演のような感じで、普段重なることのないだろう職業の二人のバディものと言ってもいいような感じでした。イギリス、ヨークの街並みも綺麗でよかったです。ドローンを使って撮影していたようで、とても綺麗な風景が楽しめます。「コロナ前にロケに行ったのかな?」なんてことが気になってしまいましたが。

 

星野さんのテーラー役はぴったりだと思いました。彼は器用そうな外見してると思います。実際マルチな活動をされてるので器用なんだと思いますし。刑事が主役ではなくて、新聞記者ってところがよかったです。悲惨な事件を記事にすることへの苦悩とかも描かれていたので。刑事は正義感だけで動けますし、100%正しいことをしているという信念が持てますけれど、記事を書く記者はそういうわけにもいかないですよね。マスコミとして叩かれることも多々あるだろうし。

 

ラスト近くはウルウルきました。家で一人で見てたらけっこう泣いてたと思います。

あんなんずるいわー。

 

登場人物が多く、集中力が途切れるって感想があるようなので、登場人物の予習をしていくのがいいかもしれません。私は、終わった後、「二時間以上あったんだ・・・」と思うくらい引き込まれたので、映画を見慣れてる人は大丈夫かと。

 

 

この先は、ネタバレになってしまうので、未鑑賞の方はご注意ください。

文字色を薄くしてあるので読みにくいときは、反転させて読んでください。

 

よくわからなかったのは、生島千代子が、息子が放火したときになぜ一緒に逃げなかったか。「なんで逃げへんの?逃げたらええやん?」となぜか関西弁になりつつ心の中でつぶやきました。あの状況で逃げない理由としたら、「自分まで一緒に逃げたら息子まで捕まる」くらいしか思いつかないんですが、当の息子は放火の犯人と逃げてるわけで。でも、あの状況のあの時点ではわからないか・・・。

 

「側で悩まれたら迷惑だから、好きにして」って言う曽根の奥様は、曽根の言う通り優しいなと思いましたし、私も同じ立場なら同じように言いそうだなと思ったのでとても親近感がわきました。ただ、悩んでいる夫を目の当たりにしたら、自分から問いただしてしまいます。テープの内容を聞いているなら、なおさらです。夫から話してくれるのを待ってはいられないだろうなぁと思いました。

 

曽根の阿久津に対する最初の怒りも最もで、それに苦悩する阿久津も人間らしくてよかったです。私も、曽根の娘に対して「驚かせてごめんね」と謝る阿久津に好印象を持ちました。会社の上司たちもいい感じに熱血で面白いし。その熱量と阿久津の冷めた感じとジェネレーションギャップもいいスパイスだったように思います。聡一郎の話を聞いた後で落ち込む曽根にかける言葉も正論だし、阿久津は本当にいい奴。幸せに育ってきたことに罪悪感を抱く曽根の気持ちもとてもわかりますが、それはやっぱり違うだろうと思いました。

 

曽根が取材中に、一般人にはわからない専門用語をちゃんと聞き返して視聴者を置いてけぼりにしないところに脚本の優しさみたいのを感じましたね。小料理屋「し乃」の板長が口を滑らせてしまうところが唯一の笑いどころで、かなりいい間で面白かった。さすが劇団☆新感線の役者さん。

 

生島の子供たちは本当にかわいそう。特に望は留学の話で舞い上がっていたところを突き落とされる。本当にひどい話です。殺されちゃうし。生島が殺されなかったとしても、中学生だったらニュースも目にしたり耳にしたりするだろうし、何か感づいてもおかしくない年頃。自分の子供を犯罪に巻き込むなんて本当にひどい親です。総一郎が自殺しようとしてたことは、踏み台に乗った時点でわかったのであの縄は写さない方がよかった。執拗に写すから必要以上に滅入りましたね。ギリギリセーフな感じを演出したかったんだと思いますが。そして、若いころイケメンだった聡一郎が大人になってあんな感じにはならないだろうと。

 

6歳という曽根の年齢も微妙。記憶に残るか残らないのか、かなり微妙な年齢だと思います。何かのきっかけで思い出すかもしれない。事件がなかなか解決しなければ、手掛かりとしてテープの声が公開されるかもしれない。そうなったら記憶がよみがえるかもしれない。そう考えると母親が録音したという事実は酷です。実際は気づかずに幸せな家庭を築けてよかった。結局気づいてしまうけれど、幸せを手に入れた後でよかった。慰めてくれるかわいい娘もいるし。

 

聡一郎が母を訪ねるシーンで、阿久津も涙ぐんでるのがずるい。こっちも我慢できなくなります。最後はベタだけどいい感じにまとめてて、少し救われました。

 

当時声紋分析がもっと発達してたらそこから巻き込まれた子供たちがちゃんと見つかったんだろうなって思いました。実際の子供たちは自分のしたことに気付いたのでしょうか。幸せな人生を送れているのでしょうか。かなり気になってしまいました。